今日は閏の2月29日。南関東では夜明け前から雪が降った。
僕にとって雪は子供の頃から縁起が良かったが、忘れられないのは 4月4日に降った大雪とたしか小学生2年の時の226事件の朝の雪だ。 イタリアでは70年ぶりにカプリ島に降った大雪と夏の7月11日に ドロミティで降った大雪。カプリ島では天辺の町アナ カプリにいたので 急な曲がりくねった雪の坂道を下りるのに苦労し、ドロミティでは 丁度誕生日だったから、天も祝福してくれるのかと喜んでいたら 雷まで派手に鳴り出して閉口した。 そういえば、ローマのサンタ マリア マッジョーレも真夏の8月に 雪の降ったところに建てられたのだそうだ。
50年程前のローマにはターヴォラ カルダという簡易食堂が方々にあった。
立食式の店も多く、前菜だのパスタだの肉だの魚だのと普通のレストランみたいに 食べる必要がなく、食べたいものだけを注文すれば良いので、時間のない人や 食費を安く上げようとする人にはとても便利だった。 僕もよくピアッツァ バルベリーニにあったターヴォラ カルダを利用したが、 サーヴィスも早く、パスタ等は注文すると5分位で出てきた。結構美味しくて 今だによく食べたスパゲッティ ラグの味等を懐かしく思い出している。 こんな皆に重宝がられたレストランもアメリカ式のファースト フードの店に 押されたのか、殆ど見られなくなったのは残念だ。
世界の道の女王といわれる古代ローマ時代からの道
アッピア アンテイカにあるレストラン サン カリストにも よく行ったものだ。 アッピア街道から階段を数段あがると店に出る。 庭が広く、真中が露天のダンス ホールになっていて、 周りはアッピア街道だから夜は暗いが、遠く、ローマを 造った人々が暮らしていたというカステッリ ロマーニの 町々の灯が見えて、とてもロマンティックだった。 最近は少しばかりだが改装したので、昔の雰囲気は 幾分なくなったが、夏の夜など彼氏、彼女と連れ立って 行ったら最高だと思う。池田厚子さんだったか、前の 天皇の令嬢が新婚旅行でローマに来られた時 このレストランにご案内したら、明日スイスに発つというのに もっとローマに居たいと言い出されて困ったことがある。 冬、行くようだったら、かけそばならぬかけスパゲッティの ようなものもあるから試してみたら如何。
ローマのトラステヴェレに今でもあるレストラン「コルセッティ」も
一応高級ということになっていた。店内は船の内部といった形で 魚料理が売物だったが、この店、入口の外に祖国を追われた 白系ロシア人の御婆さんが毎晩ヴァイオリンを弾いているのでも 有名だった。ロシアでは貴族だったそうで、品が良く弾いている 曲もクラシックが主だったが、一種の哀愁が漂って素晴らしかった 。
ローマにあったナポリ料理の店、スコーリオ ディ フリージオ。
ナポリ湾にある磯の一つの名前なんだそうだ。 店内は海辺の洞窟といった しつらえで、真中に飛び出したバーカウンターはモーターボートだった。 魚が主体の料理も結構美味しかったが、抜群はナポリ音樂のショウ。 全部がナポリ人の楽団がナポリの歌を聞かせてくれる。楽器もナポリ 独特のものだった。 この店、ローマの4大寺院のサンタ マリア マッジョーレとサン ジョヴァンニを 繫ぐヴィア メルラーナという通りにあって今は息子が跡をついでいるが、 最近は日本の団体客も沢山とっているようだ。ナポリ音楽もまだやっているが、 時代が変わったせいか、昔の情緒が薄れてきたようだ。
ローマのトラステヴェレ(テヴェレ川の向こう)は江戸の隅田川を渡った
本所、深川のように庶民的な区域で、フュミチーノの漁港からテヴェレ川を舟で 運んでくる魚の荷揚げ場が近いせいか魚料理の料理屋が多いが、中でも ダ メア パタッカという店が変わった趣向で観光客の人気を集めていた。 古いローマの歌を聞かせる楽団が何組かいて、冬は客席の間を歩き回っているが、 夏になるとテーブルを前の道にも出し、彼等も外で歌う。 狭い路地に食卓が出、人もウロウロして車も通れないから馬に乗って交通整理をする。 そのうちボロボロの作業衣を着た年寄りの男が道の真中で歌いだす。暫くすると 向かいの粗末な家の二階の窓が開いてデブデブに太ったおばさんが歌い、 暫くの間道の上と下で愛の二重唱が続く。 歌い手の姿にかかわらず綺麗な歌、 素晴らしい声なので聞きほれたこともあった。
ローマ北西部の丘、モンテ マリオに登る道ヴィア カミルッチァにあった
レストラン 「カミルッチァ」 はムッソリーニがクラーラ ぺタッチと愛の巣を 営んでいた時の別荘だっただけにロマンティックな雰囲気だった。 門を入って車のまま玉砂利を敷いたヘヤピン カーブの道を登って行くと 玄関。 アペリティフをサーヴィスされて、二階の食堂に行くが、階段は 大理石のスロープ。 手すりが天井までガラス張りになっていて、生きた小鳥が 飛び回っていた。 広々とした2階には大きなテラスがあり、プールもあって ムッソリーニがクララと戯れていたそうだが、レストランになってからは 板を敷いてその上でバンドが演奏していた。 テラスではバーべキュウも出来た。 ローマの町が見下ろせてランチも取れたが、すぐ目の前に立っている金色の マリアの像が照明される夜の方が情緒があった。 建物自体は昔のままだということで全て解放していたが、ただ一つ、 二人の寝室だけは開かずの間だった。 壁ばかりでなく、床から天井まで 全て鏡張りだったそうだ。 クララの家族も裏に住んでいたと聞いたが、このレストラン、廃業してしまい、 建物も最近取り壊されてしまった。
ローマのオルソ通りにあるバー デッルオルソ。 一戸建ちの3階で、
2階と3階がレストラン。 3階の方が高級で値段も2階より高かった。 一階(地上階はバーだが、バーの中を通り抜けなければ上のレストランに 行かれないようになっていた。 バーには弁護士だの医者だの実業家だのといったローマ一流の 紳士達が毎晩集まって仕事を離れたバカ話しや悪ふざけに興じていた。 店には何れもレコードを出している位のピアニストとギター弾きがいて、 客の求めに応じて古いザレ歌や一寸卑猥な歌を聞かせていた。 お陰で僕も戦前の美しい歌を随分聴くことができた。 階上のレストランに行き来する客の歩き方をピアノやギターで 真似させるのも彼等の好きな遊びで、真似された方は苦笑したり 冗談を言ったりして通り抜けていく。 ある晩、食事を終えた婦人が連れと一緒に降りてきた。 早速真似を始めると、その婦人、バーの真ん中で立ち止まったが、 高く結い上げた髪の毛が色々な色に輝き始めた。多分こんな 悪戯をされるだろうと電池式のイルミネーションを仕込んで来たのだろうが これには悪童達も口をアングリ開けたままだった。 日本女性の一人旅。 明日は日本に帰るというので夕食後 一杯飲みに連れて行ったら、「アリベデルチ ローマ」を演奏してくれて 彼女、ついに泣きだしてしまった。 このバー、今は改装されて昔の雰囲気はない。 経営者のアメリカ人も もう居ないだろう。
ヴィア ヴェネトはローマを代表する通りだった。
以前は名門バルベリーニ家だかの所領で野原みたいな所だったが、 やがてバルベリーニ広場からボルゲーゼ公園に登っていく道に 整備され、上流階級の人々の散歩道としてローマの野外社交場と 言われるようになった。 界隈にはイギリスのエリザベス女王も泊まったエクセルシオールを はじめ高級ホテルが立ち並び、一流の喫茶店も幾つかあって、 その間に洒落た商店もあるといった所だったので、殊に夜の人出が多く、 新聞等によく写真が乗っている有名人や俳優達が多く歩いていた。 豹の子を連れた女優にあったこともある。 事務所が近かったせいか僕もよく行って、カフェ ド パリのおもてに 出した席でお茶を飲んだり、軽食をとったりしたものだ。 カフェ ド パリの道を挟んで向かい側のドネイはエクセルシオール ホテルの喫茶店だが、朝までやっているので、ローマの夜を楽しんだあと、 夜が明けてくる頃に寄ってエスプレッソを一杯飲んだあと、家路についた ものだった。 このヴィァ ヴェネト、今はすたれ気味になってしまったのは寂しい 限りだ。
そんなに古い時代ではないが、ローマにコンヴィヴィオというレストランが
出来たのでグループを連れて行ってみた。 あんまり高級とは思えない店の造りで、 開業仕立ての頃だったから客も少ないというより殆ど居なかったが、料理は 旨い。 サーヴィスも若い男が二人だけだった。 聞いたら三人兄弟で1人が調理を 受け持ち、あとの二人がサーヴィスをやっているとのこと。 たしかローマの北の オルヴィエート辺りから出て来たと言っていたと思う。 この店、今ではローマで有名になっていて、何ヶ月も前から予約しないと 食べられないのだそうだ。 < 前のページ次のページ >
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