(4月26日の項 続き)
午後、同地が戦線に近く危険であるとの理由で移動を命ぜられ、出迎えの トラックに即刻乗車せよとのことであったが、一行は全部の荷物を駅の貨車や 一昨夜の宿舎に残してあるので、全くの着のみ着のままであるから、せめて 一昨夜の宿舎に残したリュックサックだけでも持参したいと申し出で,宿舎に 立ち寄ってトラックに積み込んだが、その積み込みに時間が掛かりすぎると して鞄類の積み込みは認め、貨車に残された荷物は論外と言うことで全部 放棄を余儀なくされ、一台の乗用トラックに全員が身動きもならぬ窮屈さで 詰め込まれ、ある者は立ったままの状態で行く先も知らされずに連れ去られた。 トラックの運転台には回転銃架に機関銃が据え付けられ、一人の米兵は 銃を手に四方を警戒し、我々を監視する米兵は実弾を込めた自動小銃を 抱えて銃口を終始我々に向け続けていた。これらの米兵は直前まで最前線で 死闘を続けてきたらしく、顔、手足は日に焼け、眼は鋭く釣りあがった一触即発の 緊張した顔付きで、時々威嚇の為か走る車上から狙った目標を撃って命中度の 正確さを誇示したり、無闇に空に向かって乱射したり、また傍らにうずくまって いる我々の仲間の男性に時間を聞いて、その腕時計を見るや自動小銃を 突きつけて寄越せとねだり、拒めば射殺する気配で脅す始末。こうして 数人は腕時計やライター等を強奪された。又途中でトラックを乗り換えさせられた 時は銃身で追い立てられ、手荷物の一部放擲を強いる虐待を受け、真珠湾で 奇襲をやった日本人はどんな扱いを受けても当然だとの言辞を唱えて、 身の危険もしばしば覚える始末で゙、非戦闘員でも交戦中の敵軍の捕虜になる ことがどんなものかを体験させられた。 (更に明日に続く)
by pincopallino2
| 2009-03-02 11:04
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