(4月26日の続き)
夜、寝ようとして、蚕棚を整頓してくっつけ合わせてみたが、一行の半分位しか
収まらないので、残りの者は椅子やテーブルを並べて横になった。ようやく
眠りについた頃、子供達が痒さに起こされたので、手持ちの蝋燭に火をつけて
見たところ、恐らくそれまでは誰も見たことがなかった南京虫の大群が蚕棚の
支柱を蟻の行列そっくりにひしめいて這い上がってくるのを各所に見つけ、
一同肝を冷やして蝋燭の火で焼き殺そうとしたが、数匹がボロボロと土間に
落ちる程度で、多くは蜘蛛の子を散らすように暗い場所に逃げ散るので、
やむなく横になると、暫くして又襲撃を繰り返してくる。結局夜明けまで
おちおち眠れなかった。翌朝子供達と大人達も皮膚の弱い者は蜂にさされた
ように、首の周り、手足、その他至るところに腫れ物が出来て、痒さ以上に
痛みを覚え、熱も出る始末で、手当ての方法もなく、南京虫の拷問を科された。