日本人逃避行  24
(5月18日の項 続き)
 早速飛行機に搭乗させられ、行く先も判らぬまま離陸した。
兵員輸送用軍用機(後にして思えばDC-3型機)で汚れた濃緑色で
塗られた機内の胴体部分に直接取り付けられた鉄製の腰掛に
小さな窓を背にして一列に坐らされた。機内の前後には数名の
MPが自動小銃を構えて我々一同を監視し、ベルトを緩め、身体を
ねじって窓から下界を見下ろそうとしてもすぐ注意され、やむなく
ベルトを強く締め直してお互いに無言のまま緊張を続けた。
当日は幸い晴天で、窓から射しこむ陽光の方向が上空に飛び上がっ後
一定していたので、東からまっすぐ西に向かっていることを覚った。
暫くして窓から盗み見した方向に、フランスの対ドイツ防衛要塞として
有名なマジノ ラインと思われるものが目に写り、これを通り越したので
フランス領内に入ったことに気付いた。航行中に我々を脅かす為か
度々乱暴な急降下、急上昇を繰り返し、時には地上の林の梢が風圧に
靡く程の低空飛行をやって見せられたので、当時ではまだ殆ど
飛行機搭乗には未経験者であった一行は耳や頭が痛み顔色青ざめて
苦しんだ。この様子を小気味よげに冷笑する米兵はやはり交戦中の
敵であることを実感した。(続く)
(悲惨な状況であったとはいえ、戦争中マジノ ラインを飛行機の上から
見た日本人はごく少なく、或いは彼らだけだったかもしれない。)
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by pincopallino2 | 2009-03-10 13:53
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