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日本人逃避行 26  (監房の説明)
 5月20日 富士電機ベルリン駐在員と同盟通信パリ特派員の二人が、
スイスとドイツの国境コンスタンツ(Konstanz)でスイス入国のヴィザ申請
手続き中連合軍に捕らえられ、同地に約1週間監禁されてからハイデルベルグ
経由で我々のいる監房〔Cell No.7)に送り込まれてきた。従って我々は
13名となり、7月24日までの68日間監獄生活を共にした。
 監房は幅6メートル、奥行き4メートル、高さは4メートル位で、入り口の
ドアは頑丈な木製。新聞受けより小さい覗き口があり、それ以外は四方八方
厚いコンクリート壁で固められ、僅かに入り口の反対側の外界に面していると
思われる壁の天井近くに、採光兼換気の為の小さな窓(50CmX20Cm)が
開いていた。勿論硝子はなく、鉄棒の桟がはめ込まれているだけで、内部は
晴天の日でもうす暗く、冷たい風や砂ほこりが容赦なく吹き込んだ。中央に
幅2メートルの土間があり、その左右は80Cmの高さから緩やかな登り
傾斜のコンクリートの台になっており、その上に古ぼけた藁布団が並んでいた。
薄汚れて臭気紛々の軍用毛布を一人5枚づつあてがわれて寝床にしたが、
それ以外、テーブル、椅子などは全然なかった。ただ窓の下の土間にバケツが
一個置かれており、始めは何の用に供するのか分からなかったが、あとで
用便はその場でバケツ内にするようにと言われた。各人は割り当てられた
毛布5枚を枕、掛け布団、敷布団と言った風に適宜配分して、中央から壁に
足を向けて一列に並んで寝るようにと命ぜられた。
by pincopallino2 | 2009-03-12 14:43
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